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岸原と岸原の姉・奈緒美。

岸原奈緒美(きしはら なおみ)
・33歳
・岸原家次女(岸原のすぐ上の姉)
・サッカー好き。ワールドカップよりJリーグ派
・岸原とはそこそこ仲が良く、よく二人で買い物に行ったり(※岸原は運転手兼荷物持ち)、贔屓にしているサッカーチームの試合観戦に行っている


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 brother.


「彼女と上手くいってないの?」

 買い物が一段落つき昼食をとっている最中に、さりげなく弟の孝弘へ投げかけた質問。
それに対して弟は、何言ってんだコイツ、という姉に対するものとは思えない表情で返してきた。
弟の名誉のために言っておくけれど、彼は決して年長者や上役に対して生意気な態度をとるような人間ではない。
幼い頃から、姉である私こと奈緒美の影響で、上下関係が厳しいスポーツの世界に身を置いていたため、むしろ礼儀正しい部類に入るはずだ。

「今日、急に誘ったのに二つ返事で来たじゃない? デートの予定とか無かったの?」

 弟本人から聞いたことはないけれど、弟には彼女が居る。絶対に。

「あれは誘ったっていうか、脅しじゃん」
「で、上手くいってないの?」

 フォークにスパゲティを巻きつけながらさらりと失礼な言葉を放つ姿に、生意気な態度はとらないという言葉を撤回したくなったけれど、ここは聞かなかったことにする。
今はそんなことよりも、革製ネックレスを身に着けるよう仕向けた彼女のことを聞き出したいのだ。
トップスの下に隠されてはいるけれど、プライベートでは腕時計さえあまり身に着けたがらない弟が、半年ほど前から会う度に件のネックレスを提げているのだ。
初めて見たときに比べ革に使用感が表れ、しかしきちんと手入れをされている風合いになっていることから日常的に身に着けていることが窺える。

「そもそも、彼女は居ないんだけど」
「たっ君、嘘は良くないよ?」
「嘘じゃないし、その呼び方はそろそろやめてほしいんだけど」

 彼女の影響は、何もネックレスだけではない。
サッカーにのめりこみ、プロに憧れ「ポーカーフェイスの方がプロスポーツ選手には有利なんだって!!」と、どこかで見聞きしたらしいことを嬉しそうに報告してくれ、幼い頃から感情を表に出さないようにしてきた弟が、感情を上手く隠せなってきている。
傍目には分からないだろうけれど、サッカーという共通の習い事や、それぞれ独立した現在でもこうして買い物に出掛けたりと、家族の誰よりも時間を共有していると自負する私には分かる。

「さっき、フレーバーティー買ってたよね? 確かあれ、かなり甘かったと思うんだけど。たっ君、いつの間に好みが変わったの?」
「……見てたのか」

 私が昼食の直前に寄ったお店で会計をしている隙に、近くのお店で彼の好みとはかけ離れた、かなり甘めのフレーバーティーを購入していた。
盗み見ていたわけではなく、連れに声も掛けずに場を離れるという弟にしては珍しい行動が気になり、結構真剣に見ていたにも関わらずその視線に気付かないくらい集中していたらしい。

「気が付かないくらい集中してたんだ?」

 悪戯めいた笑みを向けると、弟が泣き出しそうな顔でこちらを見ていた。
 先に述べたように、弟は幼い頃から感情を表に出さないようにしてきた。それも、悲しみや不安といった負の感情は絶対に。
例えば、喧嘩の末に弟がとても大事にしていたオモチャを壊してしまったとき。
家族同然に暮らしていた猫が姿を消したとき。
大好きな祖父が亡くなったとき。
不慮の事故で、ほとんど叶いかけていたプロサッカー選手の夢を絶たれたとき。
その全てで、弟はわずかに眉間に皺を寄せただけだった。
その弟が、今にも泣きだしそうな顔でこちらを見ている。それも、私だけでなく誰の目に見ても明らかなレベルで、だ。

「あのさ、“彼女”が居ないのは本当。居るのは、“彼氏”」

 一瞬目を伏せ、すぐに上げてそう答えた弟の表情は、先ほどとは違いとても凛としていた。
そうか、“彼女”じゃなかったのか。だから頑なに嘘はついていない、と言い張っていたのか。いや、そんなことよりも。

「たっ君さぁ、姉の私より先に彼氏作るとか……何様なの?」

 問題はそこである。私にはかれこれ…………考えたくないくらい彼氏が居ない。
昼食は運転と荷物持ちのお礼のつもりだったけれど、ここは払わせよう。
そんなことを考えていると、ちなみに三年目だ、とコーヒーカップに手を伸ばしながら追い打ちをかけてくる弟。
誰に似たの。昔は、奈緒美ちゃん大好き、なんて嬉しいことを頻繁に言ってくれる可愛い子だったのに。ますます彼氏君に興味が沸いてきた。

「改めて聞くけど、上手くいってないの?」
「いや、今日はバイト」
「……は?」

 バイト……ということは、いい歳して定職に就いていないような人なの!?
さすがにそんな相手、性別関係無く大反対なんだけど。

「たっ君、このさい性別なんかどうでも良いから、ちゃんと定職に就いてる人にしなさい」
「は?」
「相手の歳はいくつなの? いい歳してフリーターなの? まさか貢いでるの? もしかしてそのネックレス、お揃いで欲しい~なんてねだられたものなの!?」

 よくよく考えれば、相手が同性だというのはかなり衝撃的だし、弟は末っ子長男なので両親が認めてくれるとは到底思えない。
その他にも、挙げればいくつも問題がある。けれど二年間も交際をしていて、そういうことを全く考えないような弟ではないので私が気にすることではないし、口出しすることでもない。
……が、もしも弟が金銭的負担を強いられているとすれば話は別だ。

「奈緒美ちゃんが何を心配してくれてるのかは想像つくんだけど、それ勘違いだから。あとこれネックレスっていうか指輪を通してる革紐なんだけど、ねだられたんじゃなくて俺が彼氏に指輪とセットで押し付けたの」

 落ち着きなよ、と苦笑しながらこちらにグラスを渡す姿は、昔の可愛いままの弟で、たったいま家族に同性愛者であることをカミングアウトをしたばかりのようには全く見えない。
私がグラスを受け取ると、トップスに隠していたネックレスを取り出して見せてくれた指輪は、シンプルではあるけれど一見して質の良いものだと分かり、それに込められた想いがこちらにまで伝わってくる。

「彼氏の本業は学生。バイトは副業。まぁ、出掛ける時はだいたい俺が払ってるから、そういう意味では貢いでるかな」
「そうなんだ。……え、学生? まさか十代なんてことないでしょうね!?」
「奈緒美ちゃんて、昔から想像力豊かだよね。しかもすぐに口に出す。その癖、治した方が良いよ」

 そう言い、食後のコーヒーに口をつける弟。うん、やっぱり生意気。さっきの言葉は撤回しよう。

「ところで奈緒美ちゃん、何でそんなあっさりしてんの? いや、こっちとしては反対されないだけ有難いんだけど」
「あー……まぁ驚いたけど、それ以上に先に彼氏つくられたことにムカついちゃって」

 正直に答えると、本日二度目の、何言ってんだコイツという顔を向けられた。
……これに関しては仕方ないかなと思うが、やはり腹が立つ。ここは絶対に払わせる。ついでに、次の買い物も運転手兼荷物持ち決定。
 
 
「あのさ……ありがと」
「今度、彼氏君に会わせてよ」
「…………気が向いたらね」
「ケチ。ここ払うからさー」
「今日は俺が払う。俺の彼氏、こんなに安いと思われたくないしね」

 わざとらしく伝票に手を伸ばすと、予想以上の答えが返ってきて困ってしまった。
私が伝票を手中に収める前に、向かいの席から手が伸びてくるところまでは予想の範囲内。
その後の、弟の言葉と器用に口角だけを上げた、いわゆるアルカイックスマイルは完全に予想外だ。
この顔は、大一番で相手を出し抜いたときにだけ見せていた顔で、彼がピッチに立たなくなってから約十年、一度も見ていない。
どうやら可愛かった弟は、今も多少は可愛いけれど、年相応の落ち着きに加え姉に対する生意気さまで身に着けてしまったらしい。

「たっ君……ごちそうさま」
「どういたしましてー」


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